国登録有形文化財全国所有者の会(仮称)設立趣意書

 平成8年(1996)10月に国の登録有形文化財の制度が発足し、令和元年(2019)6月現在、
建造物について1200件以上が登録されました。今後も毎年600件増加することが見込まれて
おり、このことは、国民の文化財に対する関心の高さを表しています。
 登録文化財は、国宝や重要文化財などの指定文化財のように、許可制による強い規制と
手厚い保護により保存されるものとは異なり、近代の歴史遺産を中心として、所有者が自
主的に保存・活用するものを国の登録台帳の登録し、緩やかな保護措置で未来に継承して
いくものです。活用を前提とする登録文化財は、我が国の歴史と伝統文化を継承しつつ、
美しいまちなみを構成するとともの、国際化がすすむ我が国のまちづくりや観光振興にも
貢献できるものと考えます。
 しかしながら、登録文化財を取り巻く急速な環境の変化等により、所有者の自助努力で
は維持することが困難となり、近年多くの登録文化財が消滅に危機に瀕していると言って
も過言ではありません。このような状況の中で、平成17年(2005)、大阪府で初めて登録文
化財所有者の会が設立されて以降、京都府、秋田県、愛知県、群馬県、東京都、和歌山県、
三重県、神奈川県と9都県で所有者の会が設立され、各都県の登録文化財所有者の会はお
互いの親睦をはかりつつ、登録文化財を後世に継承するためにはどのようにしていくべき
かについて議論を重ねてまいりました。その結果、登録文化財所有者のない道県の所有者
も仲間に迎え、全国の所有者が一体となり、登録文化財を後世に継承するための活動する
組織が必要であるという認識で一致いたしました。ここに、我々は、登録文化財所有者が
抱える問題解決の一助とすべく「国登録有形文化財全国所有者の会」を設立し、登録有形を
「貴重な国民的財産」として、我が国の歴史と文化を、日本国内はもとより、世界に発信・
交流する使命と義務を遂行することを誓うものであります。この趣旨に賛同される、多く
の登録文化財所有者やその関係者の参加を求める次第です。
令和元年6月22日
国登録有形文化財全国所有者の会発起人一同